カウンセリングは役に立たない、必要ないという意見に意見する。

カウンセリング

こんにちは、D.Cozieです。
今日は「カウンセラーはいらない。けれども、こころは大切」という話をしたいと思います。

カウンセリングはいらないという張り紙のエピソード。

最近、ある話を聞きました。もう何年も前のことです。
震災で大きな被害を受けた地域の避難所でのできごとです。

そこにある張り紙が張られました。
「カウンセラーは来ないでください」

その避難所はカウンセラーが来ることを拒んだそうです。

こういったことが実際にあったのか。
あったとしたらどのような事情でそうなったのか、全くわかりません。

なので、その出来事について正確に何かを批評することはできないのですが。
ただ「震災直後に必要なのは物的な支援であって、カウンセリングは全く必要ない」という主張する方がおられるので、一応、私の見解もまとめておこうと思いました。

不要だという人への反論というよりも、カウンセラーの仕事やこころのケアについて、もっと説明していかないといけないと思ったためです。
相手が理解していないといって批判するのではなく、きちんと伝えるという仕事ができていない、カウンセラーとしての責任感からの説明です。

地震や大雨など大災害が起こったとき、まず必要な支援は命を守る支援です。
避難場所の確保、食事や寝るところを確保したり、病気や怪我から身を守る。そういった支援です。

家や住む場所をなくした人たちが避難所に移ってくる場合があります。
そういう人たちは当然、自分たちがどうなるのか、家族や知人が無事だろうか。
そういう心配や不安にさいなまれています。

だからそういった、不安や心配に対して、こころのケアが必要だと考えた方もおられるのでしょう。
たしかに、それはある側面としては正しいと私は思います。でもカウンセリングをいきなりしていいかというと、それはまた別の問題です。

非常時に人のこころに関わるということ。

たとえば。

家を無くして避難所に移ってきた。そして家族の安否も不明。不安でたまらない。
そんな情況のときに、カウンセラーという人がいきなり来て。
「なにか不安はないですか。お話聞きましょか」
といわれると、たぶん私でも腹が立ちます。

私だったら断るだろうし、その人には何も話さないでしょう。

たぶん「とくにありません、大丈夫です」というかと思います。
もし元気があったら。
「ああいうの聞かれると困ります。私のところに来ないようにいってもらえますか」
というかもしれません。

避難所に「カウンセラーは来ないでください」という張り紙がされたというエピソード。
このような情況があったかもしれません。
事実はどうかわかりませんが。

カウンセラーという人たちがこういうアプローチをとる場合が確かにあると思います。

とりあえず不安を抱えている可能性のある人たちを「調査」して、「支援が必要な人」をピックアップして、こころのケアを始める。

私でもそういうことをされたら「ほっといてくれ」と思うでしょう。
それはこころを余計に傷つける。
批判が多いのが、当然かもしれません。

こころのケアは必要です。

「こころのケア」は間違いなく必要です。心細いですし、不安をどうしたらいいかわからないので。
だれかがケアをしてくれたら、かなり助かると思います。

それでは、どうやってケアするのか。それが大切になります。

当たり前の普段のやりとりがこころのケアになる。

たとえば、避難所に一人でやってきた高齢の方を見つけたとします。とても不安そうな表情をしている。
その方に対して、こころのケアが必要だと思ったとき、カウンセラーはどうするかというと。

「どうされましたか」と情況を聞く。
「家族がくるといっているけれども、こない」といったとします。
そうするとどの家族が来る予定だったか、どうやってここまで来たかを確認します。
そして、どうすごしたらいいのかわからず困っているようでしたら。
「あちらでお茶を用意してますから、持ってきましょうか。もしお腹が空いているなら、おにぎりもありますが」
など声をかけるかもしれません。
「ちょっと横になっては?」といい、毛布や寝る場所を準備する場合もあるでしょう。
そのとき必ず本人には「どうですか」と確認をとる。
そして本人の反応をみながら、こちらも動く。

これがカウンセラーとして、まずできること。
当たり前のことのようにみえるかと思いますが、これがケアの始まりになります。
そのような関わりをずっと続けていくとようやく。

「夫が怪我をして入院した。そちらに家族が行っている。自分はここで待つようにいわれた」
などを話してくださいます。
「それは心配ですね。とりあえず、こちらでもご家族が来られたらお伝えしますので」
確認をとる。
「何かあれば、遠慮なくいってきてください」
孤独で不安な状態にならないようにケアをします。

その人の置かれた情況や体験している現実をしっかりと把握して、そこから今できるケアを考える。
その人がどのような気持ちでいるかという、こころにずっと寄り添いながら関わっていく。
それがカウンセラーの仕事です。

災害の直後というのは、食べ物や住む場所など物的な支援がとても重要ではあります。
でも被害を受けた直後からこころのケアは必要です。
とくに、多くの人が被害を受けたような情況であると。
「みんな大変なのだから、自分のことはあとまわしにしよう」。
悩みをひとりで抱えようとする人も多くいます。

そのような「一人で抱えよう」とする気持ちもきちんと理解し、そんな人でも「安心して物的なな支援を受けられるようにする」
こころを支えるのが、カウンセラーの仕事でもあります。

カウンセラーの仕事はカウンセリングだけではない。

カウンセラーの仕事を「カウンセリングやこころのセラピーをする」だけと考えていると、お互いに誤解を生みます。
こころのケアということを基本に起きつつも「その場では何ができるのか」
できる支援をしっかり見定める。
そうやって動いていくのがプロのカウンセラーの仕事だと思っています。

「カウンセラーお断りの張り紙」という話を聞いて、単純に「だからカウンセラーは役に立たない。災害初期には不要だ」という人がいると、私個人としてはとても悲しい気持ちになる。
そのうえ、もっと、こころの支援について深く考えなければならないなと思います。